2010年1月5日火曜日

最近のNGO等の活動の活発化の背景

(2) NGOの国際的な活動活発化の背景

1)通信技術及び国際メディアの発達
 最近のNGO等の活動の活発化の背景としては、福祉国家の限界や経済開発における政府の役割の限界等様々な要因が挙げられているが、主な要因の1つとして、近年における情報通信技術及び国際メディアの発達が挙げられる(注47)。電話、FAXから始まり、衛星通信、インターネットまでの情報通信技術の発達により、情報が容易に国境を越えて世界中に流通するようになった。また、冷戦崩壊に伴う情報統制の世界的な緩和を背景に中国の天安門事件や中東における湾岸戦争等の時に象徴的に見られたように、世界中の多くの人々が同時に世界の情報を知ることができるようになった。その結果、各国の環境問題や貧困問題等に関する情報も他の国々や人々にまで伝わるようになり、世界的な関心が高まるようになった。冷戦崩壊後の1990年代に地球規模の問題に対する市民社会の関心が高まり、それに伴ってNGOの国際的な活動が高まったことは、1999年のシアトルWTO閣僚会議に反対の立場を表明したNGOの半数以上が1991年以降に設立されていることにも見てとれる(第3─1─5図)。
 また、今までは地域的に孤立していたNGO運動も世界に向けて情報発信することが可能になったことから、国際的な世論を形成したり、他国、他地域における同様のNGO活動との連携を図ることによって活動を拡大、強化することが可能になった。

2)インターネットの発達と活動の拡大
 特に1990年代後半に入ってからのホームページや電子メールといったインターネット技術の発達は、NGOの国際的な活動に大きな影響を与えた。インターネットがNGO等の活動に与えた主な影響としては、従来とは比較できないほどNGOの世界的なネットワーク化が容易になったこと及びNGOの活動目的、概要等の情報発信力が飛躍的に強化されたことが挙げられる。
 この点について、NGO活動とインターネットの活用に関して尋ねた前出のアンケート調査によると、NGOが活動内容や主張の情報を発信する方法として最も活用しているのは、ホームページである。また、メーリングリストを使用した情報発信も情報誌の発行と並んで行われていることがわかる(第3─1─6図)。ホームページを活用したことによる効果としては、「同テーマを掲げる別の団体との連携が図れるようになった」、「活動に参加する人の数が増えた」という回答が上位を占めている。ホームページによって団体活動の目的や方針に関する情報発信力が強化され、同様の活動を行っている団体とのネットワークが拡大するとともに、新しい活動メンバーを勧誘することに効果を上げていることを裏付けている(第3─1─7図)。さらには、メーリングリストの活用効果としては、「団体としての発言力が増した」、「活動の対象としているテーマに関する議論が深まった」等の回答が多く見られ、関係者間において情報交換が活発になるとともに、時間と場所を制約しないサイバースペースにおいて議論が深められるようになったことを表している。また、そのような緊密な議論を通じてNGOの活動目的等に対する理解を広めることにも効果があることがわかる(第3─1─8図)。
 また、インターネットによってシンポジウム、行進デモ、その他の各種抗議行動を組織し、実行することが容易になった。特に電子メールによる情報交換を世界中で瞬時に行うことができるようになった結果、地理的、時間的な制約から解放され、最小限の人員と活動資金をもって計画を立て、抗議行動を実行に移すことができるようになったことも、NGO活動に関する情報発信力を高める上で、大きな効果を発揮していると考えられる。


第3―1―5図 NGOの発足時期
第3―1―6図 NGOの情報発信の方法
第3―1―7図 NGOの活動におけるホームページ活用の効果
第3―1―8図 NGOの活動におけるメーリングリスト活用の効果

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