2010年1月5日火曜日

「環境問題の加害者=産業部門、被害者=地域住民」という構図は必ずしも当てはまらなくなって

(2) 近年の環境問題の特徴

 近年の環境問題の特徴として、1)影響の時間的・空間的広がり(長期化・広域化)、2)汚染主体の拡大、3)ダイオキシン類や内分泌かく乱物質の問題のような新たなタイプの環境問題の発生が挙げられる。
 まず、影響の時間的・空間的広がりについてであるが、20世紀後半に入って、環境問題は一国内の公害問題(大気・水質・土壌汚染)や自然環境保護から、越境型汚染(国際河川の汚染、酸性雨等)、さらには地球規模の問題(地球温暖化、オゾン層破壊等)へとその範囲を広げている(注64)(第3―3―1表 )。これに伴い、環境問題が周囲の自然環境や人の健康等に影響を及ぼすまでの時間も長期化している。特定地域の公害問題の場合には長くても数年であったものが、地球環境問題では数百年、数千年という極めて長い期間に及ぶ(注65)ことから、長期的視野に立った対応が求められている。
第二に、従来は急激な工業化に伴う産業部門による汚染が主であったが、最近ではむしろ一般家庭から出る廃棄物や生活排水、民生・運輸部門のエネルギー消費の増大といった問題が深刻化する傾向にある。このため、旧来の「環境問題の加害者=産業部門、被害者=地域住民」という構図は必ずしも当てはまらなくなってきており、企業のみならず、民生部門も含めた環境問題への対応が必要となっている。
 第三の特徴としては、ダイオキシン類や内分泌かく乱物質の問題のような、かつては予見することができなかったタイプの環境問題の発生を挙げることができる。内分泌かく乱物質(いわゆる環境ホルモン)とは、本来のホルモンと類似作用(あるいは妨害作用)をして、正常なホルモンの働きを狂わせることにより、生殖機能等に影響を与えることが懸念されている外因性の物質であるが、現時点では、その作用・メカニズム、具体的な影響等について科学的に未解明な点が多く残されている。人の健康への影響も含め、今後の研究の成果が待たれるところである。

第3―3―1表 主な環境問題の現状

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