2010年1月5日火曜日

経済原理による環境保全への動機づけが働きにくい分野

第3節  持続的成長と環境保全の調和に向けての課題


要 旨

1.環境問題の現状
 グローバリゼーションの進展は、世界経済の発展をもたらすと同時に、地球環境に対する負荷をも生じさせている。廃棄物処理のような身近な問題から、地球温暖化や酸性雨、オゾン層破壊といった地球的規模の問題まで、環境問題の領域は極めて多岐にわたる。近年の環境問題には、1)影響の時間的・空間的広がり (長期化・広域化)、2)産業部門から民生部門にまで及ぶ汚染主体の拡大、3)ダイオキシン類等の新たな問題の発生、といった特徴が見られる。このように問題が複雑化する中で、国内レベルでの環境規制の強化に加え、国際環境条約に基づく取組みも活発化する等、その対応もグローバル化している。
2.企業による自律的な環境保全への取組み
 環境問題への関心が高まる中で、ISO14000シリーズの取得や環境報告書の作成といった、企業による環境保全への取組みが積極化している。この背景としては、まず、環境対策を講じることは収益面でプラスである、もしくは、たとえ収益的にマイナスであるとしても社会的責任を果たす上で必要なものである、との認識が企業の側で高まっていることが挙げられる。また、バルディーズ号の原油流出事故等に見られるように、環境汚染を行った場合の環境修復コスト等が膨大になる傾向にあることから、リスク回避としての環境対策が重要性を増していることに加え、消費者の環境指向が高まっていること、環境NGO等市民社会による企業活動への監視が強まっていること等も企業に環境保全を促す要因になっていると考えられる。
3.持続的成長と環境保全の調和に向けた課題
 企業の自律的な環境保全に向けた取組みが進む一方で、経済原理による環境保全への動機づけが働きにくい分野を中心に政策的な対応が必要である。こうした分野としては、1)先進国における民生・運輸部門のエネルギー消費、廃棄物問題、2)途上国における産業公害・都市型公害・地球環境問題の同時発生、貧困と環境破壊の悪循環等、3)越境型汚染や地球環境問題のような広域環境問題への対応等が挙げられよう。先進国では、こうした課題についても自律的なメカニズムを働かせるための取組みが進められているが、途上国では概して人的・技術的・資金的リソースが限られているため、必ずしも十分な成果は上がっていない。今後、持続的成長と環境保全との調和を図っていくためには、国際ルール、国内規制とその執行体制を整備するとともに、環境に関する税、課徴金や預託払戻制度(デポジット制度)等の経済的手法、企業による自主的な取組み等を有機的に組み合わせながら、自律的な環境保全の流れを作っていくことが重要である。

0 件のコメント:

コメントを投稿