2010年1月5日火曜日

内外一体の経済政策

(3) 内外一体の経済政策の必要性

 我が国が直面している「自己革新能力の向上」という課題を解決していくためには、生産物市場、資本市場、あるいは労働市場等、あらゆる市場における市場参加者の自己革新努力を促すために、市場の競争環境を整備していくことが不可欠である(注119)。
 ともすると、かつては国内事業環境の整備は国内経済政策により実現し、海外事業環境の整備は対外経済政策により実現するものと考えられていた。しかしながら、国内外の市場の一体化が進展し、モノ、カネ、ヒトが自由に国境を越え、企業の多国籍化が進展している今日においては、国内の経済政策や制度の態様が海外の経済主体の行動にも影響を与える一方で、国際的な制度のあり方が国内の経済主体の行動や産業競争力にも影響を与え得る。したがって、国内市場の競争環境整備という目標を達成するにあたっては、常に国内外の経済主体の行動を視野に入れながら「内外一体の経済政策」を実施していくことが求められている。内外一体の経済政策とは、国内経済政策及び対外経済政策を有機的に連携させることにより、国内外で調和の取れた市場環境を整備し、最終的には我が国経済の活性化を図ることである。例えば、WTOのサービス貿易一般協定(GATS:General Agreement on Trade in Services)の交渉、あるいは自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)や経済連携協定(注120)(EPA:Economic Partnership Agreement)の締結は、諸外国のみならず、我が国市場の事業環境を見直す機会を与えるとともに、実際に環境整備を促進する上でも有効な手段となろう。その意味において、国内の構造改革の推進は、国内における制度改革のみならず、こうした対外経済政策を補完的に活用することにより相乗効果を高めることができよう。一方、我が国企業が国内外で調和のとれた制度の恩恵を享受できるよう、国内における制度構築を行う際には国際的なスタンダードの動向を視野に入れた取組みが必要となろう。また、必要に応じて我が国発のルールを地域的あるいは国際的なスタンダードとして広めていくために、国内の制度を構築する段階から将来の国際的なルール・メイキングを念頭に置いた迅速な取組みが必要となろう。
 このように、国内外で調和のとれた市場環境を整備することにより国内経済を活性化させるという最終目標を達成するためには、対外経済政策と国内経済政策を車の両輪として捉え、両者の歩調を合わせながら強力に進めていく必要がある。

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