2010年1月5日火曜日

大量消費構造

3.持続的成長と環境保全の調和に向けた課題

(1) 先進国の課題

1)快適性・利便性の追求がもたらした大量消費構造
 先進国にあっては、産業公害について様々な対策が採られた結果、汚染の状況は一時期よりもかなり改善されてきた。石油ショック以降はエネルギー効率の向上にも重点が置かれ、省エネルギー技術の発達を促した。
 その一方で、運輸部門や民生部門のエネルギー消費は増加する傾向にある。1990年と1998年におけるOECD加盟国の部門別最終エネルギー消費を比較すると、産業部門が占める割合は33.7%から29.0%に減少しているのに対し、運輸部門は31.1%から34.5%に、家計部門は18.3%から 19.1%にそれぞれ増加している(第3―3―10図 、第3―3―11図 )。これは、経済成長により生活水準が向上したことに加え、テレビやエアコンを始めとする家庭用電気機器の普及やモータリゼーションの進展によるものと考えられる(後掲第4―1―7図)。また、産業部門においては、エネルギーに対する企業のコスト意識が作用し、省エネルギーが進んだのに対して、民生・運輸部門においては、こうしたコスト意識が働きにくいという問題もある。このため、民生部門においては、電力使用量の増加とともに料金単価が逓増する料金体系や、省エネナビ(注82)等の使用電力料金を逐次把握できるシステム等、価格メカニズムを通じた省エネルギーの推進について様々な試みが行われている。

2)深刻化する廃棄物問題
 大量生産・大量消費型経済システムの帰結として生じる廃棄物問題への対応も、先進国にとって重要性を増している。日本の場合、産業廃棄物については最終処分場の制約と、それに伴う処分コストの上昇による不法投棄、環境汚染がますます深刻な問題となっている(第3―3―12図 、第3―3―13図 )。他方、一般廃棄物については、リサイクル率の低さ(1997年度実績は11.0%。一方、産業廃棄物の再生利用率は42.4%)もさることながら、いかにして発生を抑制するかが課題である(第3―3―14図 )。リサイクル・リユースの推進に加え、最近では拡大生産者責任(注83)の考え方を取り入れて廃棄物の発生抑制を図る施策も実行されつつある。例えば、家電リサイクル法(2001年4月施行)では、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、エアコンの引取り・リサイクル義務をメーカーに、消費者からの引取り及びメーカーへの引渡し義務を販売店に、処理代金支払い義務を消費者に課している。これまで自治体が負担していた処理費用を顕在化させることによって、メーカー側に自社商品の処理コストを安くできる製品(リサイクルが容易な製品)を開発するインセンティブが働くことを期待しているものと考えられる。
 リサイクル関連法規の整備が進む欧州の中でも、こうした問題に先進的に取り組んできたドイツでは、1991年に制定された包装材廃棄物政令において、 Duales System Deutschland(DSD)による全国レベルの回収システムが確立された。DSDは多額の回収費用を徴収して、企業が包装材使用を削減するインセンティブを与える一方、家庭・小企業が使用する包装材の80%以上を回収するという成果を上げている(注84)。このようなシステムの成功は、EU及び他のEU加盟国のリサイクル政策にも影響を与えたと言われている。

第3―3―10図 OECD諸国の部門別最終エネルギー消費
第3―3―11図 主要先進国の最終エネルギー消費の部門別寄与度
第3―3―12図 産業廃棄物最終処分場の新設件数及び残存容量の推移
第3―3―13図 産業廃棄物の不法投棄件数及び量の推移
第3―3―14図 ごみの総排出量及びリサイクル率の推移

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