2010年1月5日火曜日

【NGOの連携で進む無電化村の電化事業】

【NGOの連携で進む無電化村の電化事業】
 
 途上国の貧困対策のためには、教育や人材育成が重要であることは論を待たない。特に遠隔地域においては、テレビやラジオ、あるいはインターネットを活用した通信教育が重要な役割を発揮する。しかしながら、今日でも20億人もの人々が無電化村にいると言われている。通信を教育に活用するためにも、まず、電化を進めることから取り組まなければならない。一方、送電線網を遠隔の過疎地域まで延長し、張りめぐらせることは非効率でコストもかさむ。深刻化する地球温暖化問題の観点からも好ましくない。そこで、注目されているのが、太陽光発電を活用した
SHS(Solar Home System)等、分散型の新エネルギーを活用した電化事業である。無電化村におけるSHS普及については、世界銀行や世界環境基金 (GEF:Global Environment Facility)等が積極的に取り組んでいる。しかしながら、村民の理解を得ることから始まって、機器の据付け、メンテナンス、融資と回収等の課題がある。このため、商業化して大量普及につなげるためには、社会システムを構築し、多くの障害を克服していかなければならない。
 このような困難な事業であるが、ヴィエトナムの無電化村へのSHS普及に、米国のSELF(Solar Electric Light Fund)とヴィエトナムのヴィエトナム女性連合(VWU:Vietnam Women's Union)というNGOが連携しながら取り組んでいる。SELFは、1990年に設立された非営利団体で、SHSを活用した途上国の無電化村の電化を進めることを目的に活動を行っている。これまで、ヴィエトナムのほか、中国、インド、南アフリカ、ブラジル、インドネシア等の国においてパイロット・プロジェクトを実施してきている(http://www.self.org) 。一方、VWUは、ヴィエトナムの女性の権利を守るための女性団体である。約1,000万人の会員を擁しているので、人口約7,000万人のヴィエトナムでは、各世帯の主婦はほとんど全員が参加している勘定になる。VWUは、教育、医療、交通インフラの整備等の問題に取り組んでいるが、これらの課題の前提としての電化事業は非常に重要な意味を持つ。そこで、こうした目的を異にする2つのNGOが手を携えてヴィエトナムに残されている600万人の無電化村の電化に取り組んでいる。
 この2つのNGOの連携事業は、1995年から試験的に開始された。1997年には、SELFがホーチミン市にSELCO(Solar Electric Light Company)という会社を設立し、取組みを強化している。2つのNGO間の役割分担は、次のような形になっている。まず、SELF(SELCO)は、 SHSの製造、据付け、メンテナンスからアフターサービスまでを担当する。山岳地帯に技術者を派遣するのは困難なため、各地域に技術者を養成し、メンテナンスの責任者を置いている。SHSの値段は、コントローラ、バッテリーや照明などの周辺機器と併せて日本円で約3~7万円程度に設定されているが、無電化村の世帯にとっては大変高価な機器である。このため、ほとんどの事例では、ヴィエトナム地域農業銀行やSELCO自身が融資を行っている。次に、VWU は、住民に対してSHSについての広報を行う。また、SHSを購入する世帯をSELCOに斡旋する。融資に際しては、農業銀行に対する融資申請をサポートするとともに、融資の審査で拒否された場合には返済を保証する場合もある。また、融資の回収についても、遠隔地での少額融資であるため、農業銀行が行う場合には大きなコストを伴うため、VWUが代行している。
 こうした2つのNGOがそれぞれの持ち味を発揮しながら連携することによって、現在、年間約1,000台のペースでSHSの設置が進められている。今後、600万人、約100万世帯に及ぶ無電化村の電化を進めていくためには、予算規模の拡大や融資金利の引下げ等取り組むべき課題も多い。しかしながら、 2つのNGOが連携しながら取り組んでいるこのプロジェクトは、SHSによる電化という困難な事業について、実践的な社会システムを構築し、世界に範を示した事例と言えるのではないだろうか。

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