2010年1月5日火曜日

世界全体のクロスボーダーM&A資金の8割以上(80.2%、1999年)は、米国及びEUへ

(2) 対内直接投資水準の国際比較

 近年の対日直接投資額は急激に増加しているものの、対内直接投資の水準(受入額及び国内総固定資本形成に占める外資の割合)を諸外国と比較した場合、我が国に対する投資水準は依然として極めて低い状況にある(第4―1―12図 )。直接投資受入額は、GDP、賃金水準、あるいは産業の集積度合い等により決定されるため一概に水準について国際比較による評価を行うことは難しいが、UNCTAD(2000)の統計(注127)によると、1999年における全世界の直接投資総額のうち日本への投資額はわずか1.5%にとどまっており、我が国の対内直接投資の水準は米国の20分の1以下となっている(注128)。また、国内総固定資本形成に占める対内直接投資の割合(1998年)を比較した場合、我が国の水準(0.3%)は先進国平均(10.9%)、世界平均(11.1%)と比較してもはるかに低い水準となっており、その結果として生
 産、雇用、研究開発面における外資の活用・貢献レベルも限定的なものにとどまっている。一方、直接投資の量・割合の高い他の先進諸国においては、国内市場において生産、雇用、研究開発面において外資が大きな役割を演じており、国内企業と外資系企業とが互いに競争・共存していく環境が形成されている(第4―1―13図 )。
 このような今日の世界的な直接投資の増加を牽引しているのはクロスボーダーM&Aの増加であり、1999年においては世界全体のクロスボーダーM&A取引規模は直接投資総額の80%以上の水準にまで達している(第4―1―15図 )。これは情報化・国際化等の進展により、企業がかつてないほどの国際競争圧力に曝されるようになるにつれて、企業が外国市場に直接投資を行う際にも迅速かつ効率的に各種経営資源を獲得することが経営戦略上不可避となってきたためである(注129)。
 現在、と向かっている。このように、欧米企業がグローバルな競争の中での優位性を獲得するためにM&Aを積極果敢に活用している一方で、日本への投資額はわずか2%強(2.2%)にとどまっている。このように、我が国においては外国企業によるM&Aの取引量が欧米と比較して圧倒的に少ないことも、対日直接投資額が諸外国と比較して低い水準となっている一因と言えよう。
 企業が自由に国境を越えて活動拠点を選ぶ今日、直接投資やクロスボーダーM&Aの取引量は、ある国の市場の魅力を測る1つのバロメーターとも言える。これまで見てきたように、現在のところ日本に対する投資水準は他の先進諸国と比較して極めて低いが、1億以上の人口と我が国消費者の購買力の高さを考慮した場合、内外投資家にとっての我が国市場の魅力を事業環境という点から向上させる余地は十分に残されていると思われる。

第4―1―12図 対内直接投資受入の国際比較
第4―1―13図 生産・雇用・研究開発における外資系企業の貢献割合
第4―1―14表 世界的なM&A増加の背景
第4―1―15図 対内直接投資総額とM&A総額

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