2010年1月5日火曜日

一国の社会制度や経済政策等全体を視野に入れて議論をする必要がある

(2) 貧困問題の解決に向けて

1)経済成長のための基盤整備
 そもそも、一国の経済成長は、海外との国境を越えた貿易や投資だけで決まるのではなく、生産要素の賦存量や技術水準、さらにはマクロ経済政策、所得再分配といった社会政策等、様々な要因で複合的に決まる。したがって、貧困問題の解決に向けて建設的な議論をするためには、貿易投資政策といった限定的な分野のみの議論にとどまらず、一国の社会制度や経済政策等全体を視野に入れて議論をする必要がある。
 一国の経済成長のためには、資本と人材の蓄積、さらには技術開発の促進を図ることが必要である。そのためには、経済活動の担い手である人材の育成を図るとともに、企業等が安定的な経済活動を低コストで展開することができるように予見可能性の高い自由な経済活動基盤となる社会的なソフト及びハードのインフラ整備が最も重要である(注51)。したがって、必要とされる具体的な取組みとしては、人材育成の観点からは国民の教育水準の向上、ソフトインフラ整備の観点からは意思決定及び手続きの透明性が高く腐敗のない政府、公正かつ実効性のある法制度の整備、社会的セーフティネットの整備、安定した金融システムの確立、投資と貯蓄を促す安定的なマクロ経済政策の実施、競争的な市場環境の整備、貿易投資障壁の低減・撤廃、さらにハードインフラの整備の観点からは上下水道等の生活基盤の整備、エネルギーの安定的供給体制の整備、交通及び通信体制の整備等が挙げられる。
 貧困問題の解決のためには、以上のような経済成長を促進するための包括的かつ整合的な社会政策及び経済政策の実施が不可欠である。また、途上国は貿易投資から距離を置くのではなく、むしろ世界的な貿易投資の拡大に対応できるような経済基盤を整備することが貧困問題解決の1つの糸口につながると考えられる。

2)東アジアの経済成長の経験
 約40年前の1960年代には世界の中でも最も貧しい国であったインドネシア、タイ等の国々は、その後、「東アジアの奇跡」とも賞賛されるほど目を見張るような高成長を遂げた。これに対し、同時期のラテンアメリカやアフリカの多くの途上国は低成長に苦しみ、際立った違いを見せた。このような東アジアの高成長の背景には、様々な要因が考えられるが、以下では人材及び資本の蓄積並びに対外経済関係の深化の2つの側面から検証してみる。
 人材の蓄積に関して東アジアの就学率の推移を見てみると、近年の東アジアにおける初等教育、中等教育、高等教育のいずれをとっても途上国平均、さらには世界平均をも上回っていることがわかる(第3─2─7表)。他方、資本の蓄積に関して東アジアの貯蓄率及び投資率を見ても、安定的なマクロ経済政策運営を背景に東アジアは他の国々に比べても突出して高いことがわかる(第3─2─8図)。
 また、東アジアは経済成長の過程において対外的な関係を深化させたことが、その成功要因として挙げられる。第3─2─9図は、世界各国の輸出と所得水準の伸び率について見たものである。ここで見られるように、東アジアの多くの国は図の右上方に集中し、高い輸出の伸び率に対応して所得についても高い伸び率を記録していることがわかる。これは、東アジアが貿易を通じて高い経済成長を遂げたことを表している。
 このように、東アジアにおいては、国民の教育への投資や安定的なマクロ経済政策運営を背景として、経済成長に不可欠な生産要素である高水準の労働力と豊富な資金が経済に投入され、さらには貿易や投資の拡大を通じて高い経済成長を遂げてきた。この東アジアの経験からも、途上国は世界的な貿易投資を拒否するのではなく、むしろ対外的には開放政策を採るとともに、貿易政策等にとどまらない包括的な経済政策によって経済成長を図ることが重要である。

第3―2―7表 東アジア諸国の就学率
第3―2―8図 東アジアの貯蓄率と投資率
第3―2―9図 輸出と所得水準の変化

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