2010年1月5日火曜日

持続可能な森林経営のための基準・指標作成等

(2) 持続可能な森林経営に向けての国際的な取組み

 森林は林産物を供給するという経済的機能のほか、国土の保全や水資源かん養、地球温暖化防止、生物多様性の確保等の公益的機能を果たしており、国際公共財の役割を果たしている。したがって、国際的にも森林保全と利用を両立させ、森林に対する多様なニーズに永続的に対応するという、いわゆる持続可能な森林経営が大きな課題となっている。このような観点から、国際的にも持続可能な森林経営に向けての取組みが始動している。
 1990年以降、国際熱帯木材機関(ITTO:International Tropical Timber Organization)は、熱帯林について「西暦2000年目標」を掲げ、その達成に向けて「持続可能な森林経営ガイドライン」等を策定した。現在、その達成のための様々なプロジェクト等を実施している。また、1992年6月にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された地球サミットを契機に、世界全体の森林を対象とした持続可能な森林経営のための基準・指標作成等が進展し、森林条約等の国際協定や国際メカニズムの検討も着手された。2000年には「森林に関する政府間フォーラム(IFF:Intergovernmental Forum on Forests)」の最終会合が開催され、持続可能な森林経営のための国際的取組みについて検討をする国連森林フォーラム(UNFF:United Nations Forum on Forests)を国連の下に新たに設置する提案を含んだ報告書がとりまとめられた。UNFFは、その第1回会合が2001年6月に開催されることとなっており、今後国際的な取組みについて検討する場として大いに期待される。我が国としてもこうした取組みに積極的に参加することが重要である。また、最近、持続可能な森林経営の実施に関し、「輸出及び調達に関する慣行を含め、違法伐採に対処する最善の方法についても検討する。」と、2000年7月に行われた九州・沖縄サミットにおけるG8首脳会合コミュニケ等にもうたわれる等、国際貿易の問題を含めた違法伐採問題への対応の必要性についても国際的な問題意識が高まっているところであり、我が国もG8の一員として適切に取り組んでいく必要がある。
 以上見てきたように、森林減少問題は人口の急増や貧困、焼き畑といった農業用地開発等の経済活動の活発化等、様々な社会経済的な状況が絡んだ複合的な問題であることから、森林減少問題は貿易政策による対応では根本的な問題解決にはつながらない。問題解決のためには、貿易政策や森林政策を含め、森林減少の背景にある様々な要因に対する包括的な対応が求められる。したがって、地球規模での森林減少に対する取組みとしては、上述のG8首脳会合コミュニケを踏まえた取組みや、途上国等の持続可能な森林経営の取組みに対する二国間、多国間の技術協力、資金協力等を進めるほか、この問題を直接扱うUNFFのような国際的政策対話の場を積極的に活用していくことが必要である。

0 件のコメント:

コメントを投稿