2010年1月5日火曜日

多様性を認めて

第2節  グローバリゼーションの進展と制度構築


要 旨

1.これまでのルール・メイキングの進展
 19世紀半ば以降の国際的なルール・メイキングの歴史を振り返ると、郵便、通信、度量衡といった国境を越える経済活動円滑化のためのルール整備から、 1980年代以降には国内制度調整へと深化してきている。国際的なルール構築の要請は、水際措置から国内措置へ、貿易分野から非貿易分野へと対象範囲を拡大している。
2.新たな分野におけるルール・メイキング
 21世紀初頭の重要課題は、投資、競争政策、電子商取引分野の制度構築であり、多様なフォーラムにおいて検討が行われている。まず、各国の経済成長に大きく寄与している直接投資は、これまでも
OECDの場における検討や二国間投資協定(BIT)の締結が活発に行われてきたが、包括的なルールは未整備である。競争政策は、大規模な合併や提携への対応、競争法の国際的なハーモナイゼーションの必要性が高まっている。電子商取引については、市場の急速な発展に対応して、商取引のルール、電子署名、プライバシー保護等について国際ルールの整備が急務となっている。
3.21世紀型ルール・メイキングへ向けて
 国際社会におけるルール・メイキングは、交渉参加国の増加や対象分野の多様化が進んでいる。こうした状況に対応してルール・メイキングを進めていくためには、多様性を認めていくことが必要である。例えば、1)協定への参加者を弾力化する、2)制度の統一化を図るのではなく一定の自由度を認めるアプローチを採用する方法が考えられる。また、途上国に対して、新たな交渉に参加するインセンティブを与えるとともに、合意されたルールの履行を確保するための体制整備を行うため、途上国の能力向上が重要である。さらに、ルール・メイキングの迅速化が求められている中で、国際会計基準や国際標準等、専門性や能力の優れた民間部門がルール・メイキングの主体となる分野も出てきている。こうした分野における政府の役割も重要性を増している。例えば、我が国の優れた技術が国際標準となるよう、アジア太平洋諸国との協力関係の構築等、戦略的な取組みを展開していくことが必要である。

0 件のコメント:

コメントを投稿