2010年1月5日火曜日

労働問題が単なる隠れた保護貿易主義につながらないように

1.労働に関する問題

(1) 労働に関する問題の背景

 労働問題に関しては、途上国における強制労働や、児童労働によって先進国の雇用が奪われているとの主張がある。しかしながら、このような議論の内容は2 つの立場からのものに大別される。1つは、輸出国である途上国の労働者擁護といった人権擁護の立場からの主張であり、もう1つは輸入国である先進国の産業・雇用保護のための保護貿易主義的な立場からの主張である。従来から、貿易投資と労働の問題をめぐる議論ではこれらの2つの異なる立場からの議論が常に混在している。これらの主張を混同すれば、先進国の保護貿易主義者が利する一方で、途上国においては貿易投資の拡大による経済成長が阻まれることによってむしろ労働環境の悪化につながるおそれもある。したがって、労働問題が単なる隠れた保護貿易主義につながらないように注視していく必要がある。なお、環境基準をめぐる議論についても同様の構図があり、留意が必要である。

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