2010年1月5日火曜日

「計画立案、実施・運用、点検・是正措置、経営陣による見直し」という一連の行為

2.企業による自律的な環境保全への取組み

(1) 企業を取り巻く状況の変化

 環境問題への関心が高まる中で、これまで受け身の対応が中心であった企業において、より積極的な環境対応を行う動きが見られるようになってきている。
 企業の環境問題への取組みを端的に示すものとして、環境マネジメントシステムの構築が挙げられる。これは、企業が事業活動を行うことから生じる環境負荷をできるだけ少なくするために、企業自らが環境方針を設定し、「計画立案、実施・運用、点検・是正措置、経営陣による見直し」という一連の行為について継続的改善を図るもので、1996年に国際規格としてISO14001が発行された。ISOによれば、1999年末時点のISO14000シリーズの取得件数は84か国で14,106件となっている(第3―3―4図 )。国別では日本が最も多く、以下、イギリス、ドイツと続く。日系企業の取得件数が多いのは、取引先企業からの要請があるためと考えられる。日本規格協会の統計を見ると、ISO14001の取得企業は製造業が大半となっているが、金融・保険等の非製造業においても取得件数は増加している。
 また、企業の自律的な環境対応を示すため、環境報告書を発行し、その中で汚染防止や環境保全に関する具体的な取組みを紹介したり、環境会計を公表する企業も増えている(注68)。環境会計は、企業等の環境保全への取組みを定量的に評価する方法の1つである。これを導入することによって、内部的には企業等の環境保全費用の管理や環境保全対策の効果に係る情報を提供し、より効果的な環境対策への取組みを促す一方で、外部的には消費者、環境団体から株主、投資家及び金融機関といった利害関係者に対する情報開示という機能を果たすことが期待されている。我が国においても、大企業を中心に導入が進んでいる。
 現在、環境会計の考え方や手法については特に統一されたものはなく、国際的にも様々な試みがなされている。環境庁は、環境会計について共通の枠組み・考え方を提示することにより、企業等の実際の取組みが進展するとの期待から、1999年に「環境保全コストの把握及び公表に関するガイドライン(中間とりまとめ)」を発表した。その後、実務面からの意見聴取や海外の動向等に関する検討を経て、2000年3月に「環境会計システムの確立に向けて(2000年報告)」をとりまとめ、その中で「環境会計システム導入のためのガイドライン(2000年版)」(以下、「環境庁ガイドライン」という。)を提示している。
 環境庁ガイドラインでは、環境会計の経済効果を1)環境保全がどの程度達成できたかという「環境保全効果」、2)環境保全活動が結果的にどの程度のコスト削減や収益獲得に結びついたかという「経済効果」とに分類している。さらに、経済効果の中には確実な根拠に基づいて計算できるものと、環境対策への取組みが企業イメージの向上となって売上増にも貢献している、あるいは環境汚染リスクを未然に回避できたといった効果を仮定的な計算によって推計するもの(いわゆる「みなし経済効果」)とがあり、環境庁は前者については情報開示を推奨し、後者については内部利用を想定している。
 実際、企業の環境報告書を見ると、経済効果の公表については、確実な根拠に基づき算出したものにとどめる企業と、みなし経済効果も含めて公表する企業とが併存している。現在、我が国で環境会計を公表している企業のうち56事例について、経済効果の算出範囲を見ると、みなし経済効果を含めているものが1割強、含めていないものが8割弱となっている(注69)(第3―3―5表 )。みなし経済効果が含まれている場合には、どの程度までを環境対策の効果とみなすかによって環境収支が大きく異なるため、一概に評価することは難しいが、上記の事例では約7割が黒字、約3割が赤字という結果となっている。また、確実な根拠に基づく効果のみを計上した場合でも5%弱の企業が黒字となっている。このように、みなし経済効果を含めている場合には、収益面でもプラスになっているケースが多く、みなし経済効果を計上していない企業については、収益面では依然としてマイナスになっている場合が多い。しかし、現にこうしたケースについても環境会計の開示が行われていることは、環境投資は社会的責任を果たすために必要なものであるとの積極的な認識を持つ企業が増加していることを示しているものと思われる。

第3―3―4図 ISO14000シリーズ登録状況
第3―3―5表 環境会計の経済効果の算出範囲と収支

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