2010年1月5日火曜日

国内外で一体化された経済政策を運営

第1節 求められる内外一体の経済政策


要 旨

1.求められる内外一体の経済政策
 現在日本経済が直面している閉塞状況をもたらしている要因としては、1)市場の成熟化、2)国際化及び情報化の進展を通じた競争の激化、3)諸外国における構造改革の進展等、我が国を取り巻く外部環境の変化に対する迅速な対応が十分に図れていないということが挙げられる。これは、我が国が戦後半世紀にわたり経済的な成功体験を積み重ねるに従い、変革期に必要な自己革新能力が低下してしまった点に、その本質的な要因があるのではないだろうか。日本経済がこうした変化に対応するための柔軟性と活力を取り戻すためにも、国内経済政策と併せて対外経済政策を一体的に活用することにより、内外で調和のとれた市場環境を整備し、構造改革を早期に実現していくことが必要である。
2.構造改革推進のための対内直接投資の積極的活用
 対内直接投資は、競争促進や技術の拡散を通じて我が国経済を活性化し得る有効な手段であるとともに、その規模は我が国の事業環境の魅力を測る際の1つのバロメーターとも言える。直接投資受入額は、賃金水準、あるいは産業の集積度合い等多様な要因により決定されるため、一概に水準について国際比較による評価を行うことは難しいが、対日直接投資の規模は対米直接投資のわずか20分の1の水準にすぎない。また国内総固定資本形成に占める対内直接投資の割合も 0.3%であり、世界平均の11.1%と比較しても極めて低い水準となっている。対内直接投資を促進する際の課題については様々な指摘がなされているが、今後我が国は1)会計監査の厳格化を通じた企業情報の信頼性向上、2)事業再編を円滑化するための制度の見直し、3)外国人の取締役・株主が柔軟に経営参加するための環境整備等を進めていくことが必要である。
3.対外経済政策の活用による国内市場環境の整備及び市場との対話の重要性
 近年の直接投資額の世界的な増加に伴い、投資に関連する多国間、二国間のルールを整備する動きも活発化している。多国間の投資関連のルールとしてはこれまでにTRIM協定、GATS等が締結されており、二国間においては投資を保護・促進するための投資協定が締結されている。このほか近年の自由貿易協定においては、モノ、カネ、ヒトの流れを円滑化し、直接的・間接的に投資を促進するための各種措置が盛り込まれている。今後我が国が対内直接投資を促進するためには、国内における制度改革を行うとともに、こうした対外経済政策を活用することにより効率的に事業環境の改善を行っていくことが必要である。また、対内直接投資を促進するためには、政府が発信する政策の方向性(メッセージ)が海外の投資家や企業から評価され、実際の投資行動へと結びつくことが不可欠である。国内外で一体化された経済政策を運営していくことは、我が国の一貫した政策の方向性と構造改革に対する意志をメッセージとして市場に伝える上でも有効であろう。

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