2010年1月5日火曜日

いわゆる四大公害病(水俣病、四日市喘息、イタイイタイ病、新潟水俣病)がきっかけ

1.環境問題の現状

(1) 高まる環境問題への関心

 グローバリゼーションの進展は、世界経済の発展をもたらすと同時に、地球環境に対する負荷をも生じさせている。このような状況の下で、経済の持続的成長と環境保全との調和を図ることが求められている。
 戦後、日本で環境問題が大きく取り上げられたのは、いわゆる四大公害病(水俣病、四日市喘息、イタイイタイ病、新潟水俣病)がきっかけである(注61)。 1970年の公害国会では公害対策基本法の一部改正法を含む14の法律が成立し、1971年には公害行政を一元化するべく環境庁が設置された。企業がこれらの諸規制に対応して、脱硫装置の開発や排水設備の導入等を行った結果、産業公害は徐々に沈静化していった。その後に起こった2度の石油ショックによるエネルギー価格の高騰は、日本企業の国際競争力にも大きな影響を与え、エネルギー効率を高めるための技術開発や設備投資を促すきっかけとなった。政府は、 1979年に「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネルギー法)」を制定し、工場、自動車、電気機器の省エネ化を推進した。この時期に開発・導入された省エネルギー技術は、エネルギー消費の低減と同時に生産性向上にも貢献し、大幅なコストダウンにつながった。
 1980年代に入ると、大量生産・大量消費型経済システムにより生じた廃棄物問題、オゾン層破壊や地球温暖化といった地球環境問題等、環境問題は様々な広がりを見せ始める。最近ではダイオキシン類や内分泌かく乱物質の問題等、その対象領域は拡大する一方となっている。
 他方、欧米では、1980年代に起こったいくつかの環境汚染事故が、環境問題に対する関心を高めたと言われている(注62)。具体的な事例としては、1984年にインドのボパールで発生したユニオン・カーバイド社の工場からのガス流出事故や、1986年に起こったチェルノブイリ原子力発電所事故、1989年のバルディーズ号事件等が挙げられよう。このうち、ユニオン・カーバイド社の事故は米国において「知る権利」法を制定するきっかけとなり、バルディーズ号事件は油濁法制定や海洋汚染に関する条約の見直しを促すと同時に、企業の環境配慮の責任を掲げたバルディーズ原則 (CERES原則)(注63)の確立につながった。こうした経験の積み重ねが、行政・企業・NGOらが一体となって環境問題解決に取り組む素地を作り出したものと考えられる。

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